卓越した技が生み出す芸術
これまで陽の目を見ることがなかった不完全な真珠の一粒一粒に金継ぎを施すことで、他に類を見ない新たな価値を創造する。それが、私たちのクリエイションにおける根幹です。日本の伝統技術である金継ぎは漆芸の一種。古来から伝わる漆という天然の素材を使い、同じく豊かな自然の中で育てられた真珠の美しさを引き出しています。

不完全の美
室町時代に確立したと言われる金継ぎは、単なる修復技法ではありません。諸行無常、つまり永久不変なものはないと説く禅の教えを反映し、割れたり欠けたりした器物の修復痕をも変わりゆくあるがままの姿、その個性として肯定するという思想を含んでいます。こうした哲学的な要素も、金継ぎが世界中で大きな注目を集めている理由のひとつ。私たちはこの金継ぎの技術を駆使することにより、不完全な真珠の不完全さを損なうことなく、唯一無二のジュエリーへと昇華させています。

精緻を極める手仕事
10mmにも満たない小さな真珠に金継ぎを施すことは、決して簡単な作業ではありません。しかし、私たちは何度も何度も試行錯誤を繰り返し、真珠に金継ぎを施す技術を確立しました。私たちが取り扱う真珠の一粒一粒は、すべて大きさも形状も異なります。また、部分的に真珠層が剥落したり、小さな穴が空いているなど、状態もそれぞれに違うもの。豊かな個性を持った真珠に金継ぎを施していくため、必然的に私たちのアイテムはすべて世界にたったひとつしかないものになります。

金で繕われた部分の美しさばかりが注目されがちですが、じつは金継ぎでもっとも重要な役割を果たしているのは漆です。真珠の金継ぎにおいても、私たちは合成樹脂などを使用するのではなく、天然の漆を使った伝統的な技法にこだわっています。

漆の採取
漆の採取はすべて漆掻き職人による手作業でおこなわれます。樹木への負担を最小限に抑えるために、漆掻きの作業をおこなうのは4日に一度。これを半年ほど続け、一本の木からすべての漆を採取します。

血の一滴
10〜15年ほどかけて栽培されたウルシノキから採取される漆は、平均してわずか200mlほど。そのため、日本では古くから「漆の一滴は血の一滴」と言われ、一滴たりとも無駄にしないよう大切に扱われています。

自然との調和
漆も真珠も豊かな自然の中で時間をかけて育てられ、人間の手作業で丁寧に収穫されるもの。人と自然との調和から生まれる素材で構成されるからこそ、そこには工藝的な美しさが宿ると私たちは信じています。